交通事故損害賠償請求、示談交渉について
自動車事故が発生した場合における自動車保険について保険会社社員による弁護士を立てないで相手当事者と示談交渉を行うことについて、非弁活動という観点から違法性が問題視されたが、1973年9月1日に社団法人日本損害保険協会と財団法人日弁連交通事故相談センターとで覚書を締結し、弁護士資格のない保険会社社員による示談代理交渉が事実上認められている。
▼ 交通事故被害者の事故後の対処方
1. まずは物損の被害でも人身事故被害の場合でも相手の身分・住所・電話番号・保険の加入の有無を絶対に確認してください。
加害者側に損害賠償請求する際に必要な情報になります。相手方が不明では損害賠償の請求を行うことが困難になりますので確認は必須事項となります。
2. 最寄の警察署又は交番に交通事故の届け出を行う。
車には全て強制加入の自賠責保険(自動車損害賠償保障保険)という保険が掛けてあります。この保険金を請求する手続の際に交通事故証明書が必要になってきます。この証明を後日出してもらうには警察署又は交番に届け出て正確に事故の状況を調書にとってもらう必要があります。また任意保険請求の際にも必要です。この証明書がないとういうことは自賠責保険がもらえないということにもなりかねませんので、人身事故・物損事故を問わず必ず届け出てください。
3. 必ず医師の診断を受けること。示談交渉の際に提示することが出来る診療費用の明細書や領収書を保存しておく。
事故を起こしてしまった加害者は刑事上・民事上・行政上の3つの責任をおわなければなりません。しかし被害者にとって最も重要なのが民事上の責任です。軽症ならまだしも、交通事故の場合は重症に至るケースが非常に多いので、場合によってはこれからの人生に支障がでてくるかもしれませんし、一生怪我が治らない可能性だってあるのです。そのためにはやはり生活費が必要ですし、治療費にしても高額になっていきます。正当な賠償額を得るためにはそれなりの証拠も必要になってきます。
▼ 保険金(損害賠償)を請求する。
人身事故の場合は被害者は怪我をしているので、もちろん損害賠償請求することはできます。車を所有している方は全員自賠責保険に強制加入(車検切れの場合は除く)しています。
損害賠償請求は二段階構成になっています。
・ まず加害者の自賠責保険金を請求する。(障害限度額120万円・死亡3000万円・後遺障害発生・第一級~第14級は別途請求)
・ 自賠責保険で足らない分は相手方が任意保険に加入していれば任意保険。加入していなければ加害者本人に損害賠償を請求する。
▼ 保険金をめぐる問題
最終的には損害賠償額の額が重要です。算定額の基準としては3種類存在しています。
・判例基準額
正当な賠償基準とはこの事でしょう。3種類の中では最も高額です。
法律家はこの算定基準を使用して賠償額の算定基礎としています。
・保険会社基準額
保険会社の基準は低水準です。例えば裁判所基準で入・通院慰謝料額の基準は入院一ヶ月で32万円~60万円ですが、保険会社算定基準だと、入院一ヶ月で24万6000円です。
一ヶ月の単位で考えると少な過ぎると思うかもしれませんが、入・通院が長引くほどその金額の差は大きく開いていきます。
・自賠責保険基準額
自賠責保険は被害者の救済にできた法律で、最低限度の保障を行う為の制度が自賠責保険法です。
自賠責保険の入・通院慰謝料額は入・通院実日数によって算定され一日4100円が慰謝料額となります。これもまた裁判例基準とは大きな開きが長期化すればするほど顕著になります。
▼ 損害賠償額算定例
【事例】
女子15歳の中学生の傷害事故で後遺症のない場合。入院35日。通院延べ約4ヶ月 実通院36日
民事損害賠償額額には事故により受ける損害を以下のように3つに定義しています。
1. 積極損害 直接に受ける不利益
2. 消極損害 将来的に発生する不利益
3. 慰謝料 精神的苦痛等による不利益
※以下は15歳の中学生の算定例です。
▼ 積極損害
1. 入・通院治療費 120万円
2. 付添看護料(職業的付添看護婦費用) 25万円
3. 通院付添費 3000×36日=10万8000円
4. 入院中雑費 1400×35日=4万9000円
5. 家庭教師代 25万円
6. 入・通院交通費 1万5000円
7. 衣料損傷費(修理不能の場合は購入時の価格) 2万円
積極損害の合計 189万2000円
▼ 消極損害
0円(休業損害なし)
▼ 慰謝料
約120万円
以上、積極損害・消極損害・慰謝料の合計309万2000円が損害賠償額となります。
※上記事故発生に関し、被害者に過失があれば、過失相殺されます。